匠の仕事 tanico MAGIC

ビストロ ヴァリエ店内

設計からのコメント

「お店が成功するために、シェフのご要望以上のご提案をし、厨房という作品を作る」これが、今回の厨房を作るにあたって、かかげた目標です。

そのために、シェフの技術を最大限に発揮でき、一日厨房にいても苦にならないような働きやすさと、カッコ良さが両立した厨房にしたいと思い、プランニングを始めました。

お客様である高井シェフとの初めてのお打ち合わせは、シェフの活躍の場『厨房』でした。そこで、シェフにはいつも通りに動いていただきながら動線を分析し、ご要望を伺いながら、厨房プランの核となる部分を作りました。厨房は現場目線が重要です。実際の『厨房』に行ってみないと解らない発見は山のようにあります。今、考えてみるとこの最初の打ち合わせが『厨房』だったからこそ、シェフのお考えを汲み取ることができ、ご満足していただける厨房をお納めできたのだと思います。

また、今回はタイミングがよく、シンガポールで開催された厨房設備機器の展示会にも足を運ぶことができ、そこで見聞きしてきたものを、自分の中で消化できたことがより良いご提案につながりました。


ビストロ ヴァリエ
ビストロ ヴァリエの設計図
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妥協しなかったフランスレンジ

フランスレンジ

「やる時は妥協を許さず、とことんやる」これが私のモットーです。このフランスレンジの製作の際は、工場の製作者は私の出す沢山の難易度の高い要望を一つ一つクリアーしながら、様々な提案もしてくれました。

ここまでフランスレンジにこだわったのは、「最近は厨房をご覧になりたいお客様が増えているので、フランスレンジはフランスで修行していた時に使っていたレンジの様に斬新なデザインにしたい。そして、メインとして厨房の中心に構えて、パフォーマンスの場にしたい。」というご要望をいただいたからです。
また、ビストロヴァリエ様のお客様は女性の方が多くその視点も組み込むために、当社女性設計士の意見も積極的に取り入れデザインしました。

厨房は舞台で、そこにある厨房機器は、舞台に立つシェフたちが使用する小道具であったり、舞台装置にあたるもの。あくまでも厨房に立つシェフが主役なので、その主役を目立たせる役割となるようなフランスレンジを設計しました。


曲線美にこだわった取手

キャビネットの取手

フランスレンジのキャビネットの取手は全体的な調和を考慮しR加工にしました。

取手は思い通りのRの曲線を出すために、角パイプを使ったり、無垢ステンレス材を使ったりしましたが、上手く曲がらなかったり、重すぎて扱いにくくなったり…と思い通りのカタチにするには苦労しました。

そこで、角のステンレス材の中に砂を入れて、曲げることによってようやく思い通りの曲線に曲げることができました。さらに、R加工の曲線美を活かすために、エッジ部は鏡面仕上げにしました。


細部にもこだわり、使い勝手を考えた設計

レンジのツマミ

いろんなレンジのつまみ

まさに、「Simple is best」といえるこのつまみはフランスレンジのアクセントになるようにボリュームがあるデザインにしました。無駄な物をそぎ落とし、使い勝手やデザイン性さらには機能性、耐久性をも両立させたつまみです。

シンガポールの展示会では、日本ではあまり目にすることない様々なデザインのつまみに出会えましたが、そのどれもが日本人の手には大きすぎるものばかりでした。そこで、最適なものを作ろうと粘土で試作品を何回も作り、ようやく今の形に辿りつきました。

使い勝手の面でも火力調節位置は、操作しやすい場所をじっくりと検討し、ツマミ素材は軽くてメンテナンスのし易いアルミの削り出しを使用。また、アルミの材質は質感がなく年月が経つと黒ずんでしまうため、クリアーアルマイト加工を施しました。


フランスレンジの棚

フランスレンジの棚

シェフからのご要望で製作したこの棚は、レンジから出る排熱を利用して調理中の料理を置く台です。
食材をこの台で一休みさせることにより、調理中の食材の熱を極端に奪うことなく、ソースの染みこみ方や肉汁の量を調節することができ、お客様にベストな状態でお料理を提供できます。


お店のロゴ入りサラマンダー

ロゴ入りサラマンダー

サラマンダーはどの位置からも使えるように、回転できるようにし、裏側にはブラックステンレスを貼って、お店のロゴを入れました。
ブラックステンレスの形状はエスプレッソマシーンにヒントを得ました。デザインする際は机に向かって考えることもありますが、日常生活のふとした瞬間に思いつくことも多々あるんです。


扉の開閉

扉の開閉
物を出し入れしやすくするため、フランスレンジの端の収納は二方向から物を取り出せるように、扉を2辺から取り付けました。

より美しく見せる為の工夫

より美しく見せるための工夫
正面パネルのコーナーエッジはシャープに見せるためあえて塞さぎませんでした。縁の部分は鏡面仕上げにし(①)、照明の光がテンレスに反射し、ブラックステンレス(②)の質感を際立たせました。


見ためと使い勝手を考えたキャビネット

作業機器

キャビネット

常に、お客様の絶えないビストロヴァリエ様では充実したサービスをご提供するために、厨房にはいつも大勢のシェフが立っています。
限られた厨房スペースでシェフたちが動く動線に支障をきたさないようにするために、キャビネットの扉の開く方向や、開き方は家庭用システムキッチンの仕様を参考にしました。また、オープンキッチンという事もあり客席から見える場所には極力物を置かないという事を徹底するため、扉を取り付けクローズ収納にして、扉開閉時に出る音が客先に響かないように各所にダンパーをつけました。

吊り戸棚

一見するとただの吊り戸棚ですが、この戸棚は洗ったフライパンや調理道具類を乾燥・保管できるように底板は取り付けず、下のキャビネットに排水設備を設け、上から落ちてきた水滴を受けられるようにしました。上部にはスリットを設けることで通風を利用し庫内道具類の乾燥ができるようにしました。


最後の記念

プロスターモデル タニコー1

高木シェフからのご要望で、プロのためのハイグレードフランスレンジという気持ちを込め、『プロスターモデル タニコー1』というオリジナルロゴをフランスレンジに入れました。
さらに、その下の扉には、シェフと並んで、厨房製作に携わった工場の製作担当者や私の名前をいれました。これを見る度に、高井シェフとの出会いに感謝し、この仕事をやっていてよかったと心から思えます。


フォトギャラリー

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